ネットでの投稿 匿名だから安心? プロバイダ責任制限法の改正で発信者特定が迅速化

ネットでの匿名の投稿、誰の投稿か分からないからと、何も気にせず、ネットに発信していませんか? 実は、ネットでの匿名の投稿から、個人を特定するのは可能です。

 

個人を特定する流れは以下になります。

 

①投稿がされたSNSなどの運営会社(コンテンツプロバイダ)に対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の「IPアドレス(コンピューターのアドレス)とプロバイダ」の開示を受ける
→裁判所への仮処分申立て

 

②)IPアドレスから判明したインターネット接続業者(アクセスプロバイダ)に対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の個人情報の開示を受ける(契約情報、住所・氏名・メールアドレス・電話番号など)。

→裁判所への仮処分申立て

 

③これで、その投稿をした人の住所・氏名などが判明。

 

④投稿者に対して損害賠償請求等を行う
→(示談がまとまらなければ)裁判所への訴訟提起

 

上記のように、発信者を特定するだけでも2回、損害賠償請求訴訟を含めると、最大3回の裁判手続きが必要になります。

 

なお、2022年施行予定の改正プロバイダ責任制限法では、「発信者情報開示命令」の制度が新設。

被害者が「発信者情報開示命令」を申し立てた場合、現状2つの手続き(上記①、②)に分けざるを得ないコンテンツプロバイダとアクセスプロバイダへの請求が、実質的に1つの手続きで審理されます。

 

参考:

「改正プロバイダ責任制限法」施行は誹謗中傷など匿名投稿の抑止力となるか?(@DIME) - Yahoo!ニュース -

 

このように、世の中の動きは、ネットでの誹謗・中傷を含む投稿が問題になる中、SNSなどの匿名の投稿でも、個人ができるだけ容易に特定できるようになりつつあります。

 

ネットでの投稿が匿名だから、「なんでも書いちゃえ!」という安易な気持ちでは、犯罪者になる可能性があります。やはり、節度を持った投稿、人を思いやる投稿が大切ですね。

誹謗中傷に関して様々な罰則があります。”補足3:どのような行為が誹謗中傷になる?”を参考にして下さい。

なお、インターネット上で誹謗中傷されたらすぐに専門家に相談をするということが大切ですね。

 

この内容、以下の記事を参考に書かせてもらいました。とても分かりやすい内容でした。ありがとうございました。

 

インターネットでの匿名の投稿から「特定」されるまで – 弁護士法人名古屋法律事務所 – 名古屋駅、港区東海通駅 -

 

補足1:2022年施行予定の「改正プロバイダ責任制限法」

 

SNSは、匿名の状態で自分の主張を書き込むことができるため、誹謗・中傷を含む投稿が問題となっています。

この裁判の手続きを迅速、かつ簡易的に行うことができるようにするために、発信者の情報開示請求を1回の手続きで済ませることができる新たな裁判手続き(非訴手続)が創設されました。

情報開示を拒否または、開示に応じない発信者に対してはその理由も聴取しなければならないことが定められました。

 

補足2:プロバイダ責任制限法とは

 

下記の記事を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。詳しくは以下を参照下さい。

 【2022年施行予定!】プロバイダ責任制限法の改正!改正ポイントについて解説。 - ContractS CLM(コントラクツ CLM)| ContractS(コントラクツ)株式会社 - 

 

プロバイダ責任制限法では、インターネット上に情報を流すことで個人や団体等に対する権利の侵害があった場合において、プロバイダ等の損害賠償責任の免責要件を規定するとともに、被害者が権利侵害情報発信者の情報開示を求める権利を規定。

 

プロバイダ責任制限法が改正される背景

SNSの多くはログインしたときのIPアドレスは保持、ただ投稿を行ったときのIPアドレスは保有していません。今までのプロバイダ責任制限法は、このログイン型投稿における権利侵害については想定をしておらず、今回、このような権利侵害の被害も救済することを目的にプロバイダ責任制限法が改正。

 

プロバイダ責任制限法の改正ポイント

①発信者の情報開示請求を1回の手続きで済ませることができる新たな裁判手続き(非訴手続)が創設。

②ログイン型投稿においても開示請求を行うことを可能(開示請求範囲の拡大)

③意見聴取時に発信者が開示を拒否または応じない場合にその理由の照会をすることの義務化

 

なお、名誉棄損とは、不特定または多数の人が知り得る状態において、他人の社会的評価を害する事柄を周囲に伝えること。SNSの代表格「Twitter」に他人の誹謗・中傷を書き込んだ場合には、日本の法律に則り、裁判等の必要な手順を踏むことによって名誉棄損に該当するツイートを行った犯人を特定することが可能です。

 

補足3:どのような行為が誹謗中傷になる?

 

誹謗中傷に関して様々な罰則があります。

下記の記事を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。詳しくは以下を参照下さい。

「改正プロバイダ責任制限法」の成立を受け、SNSでの誹謗中傷に関わる経験について調査を実施。誹謗中傷の事例や対処法についても解説。|株式会社カケコムのプレスリリース

 

①名誉棄損罪にあたる行為
公然と事実を摘示して相手の社会的名誉をおとしめる行為は、名誉棄損罪に問われ、罰則は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

②侮辱罪にあたる行為
先述した「名誉棄損罪」に対し、事実を摘示せず、公然と人を侮辱した場合、侮辱罪に問われ、拘留又は科料が科せられる可能性があります。「バカ」「能なし」など、相手の人格を否定するような内容の投稿は、侮辱罪にあたる可能性があります。
③信用毀損罪・業務妨害罪にあたる行為
事実とは異なる情報を流し、人の信用を失わせた、または業務を妨害した場合、信用棄損罪・業務妨害罪に問われ、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

④脅迫罪・強要罪にあたる行為
相手を「殺すぞ」といった言葉で脅迫したり、その脅迫によって本来義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりすると、脅迫罪や強要罪に問われる可能性があります。脅迫罪の場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、強要罪の場合は3年以下の懲役が量刑として科されます。